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ブライス・ダラス・ハワード「監督」としての顔#2

映画
Reunited. And it feels SO GOOD! It’s an honor to have been invited back to direct on the new season of #TheMandalorian — there’s nothing… | Instagram

今回は前回に引き続き、ブライス・ダラス・ハワードの監督作品を通して、彼女の「監督」としての顔に迫りたいと思います。

前回#1と次回#3はこちら(↓)

今回扱うのは

・大学時代の友人キャサリン・ウォーターストンとアルフレッド・モリ―ナが主演の『Orchids』

・統合失調症患者を描いた『Call Me Crazy:A Five Film (Lucy)』

の2作品です。

Orchids (2006)

あらすじ
カメラが趣味の女性ベアトリスがある日写真を撮っていると、ブチギレた女性が豪邸から出てくる。
彼女が投げ捨てた新聞の切れ端にはとある部分に赤丸がしてあった。
『中年の男やもめ女友達(彼女)募集中』
彼女は興味を惹かれそれに応募することにした。

男やもめとは、奥さんと別れた人のこと(死別・離婚)。
題名の Orchids は蘭のこと

YouTube で観ることができますが字幕はありません。
なのでまたネタバレ解説書いておきます。

ネタバレ解説・感想

・・・女性が丸めて投げ捨てた新聞のある部分に赤丸が付けられていた。
『中年の男やもめ女友達募集中』
『私の全てを最後に朝食を食べた女性に残すという遺言に書き換えました。
歳は21以上・・・犯罪歴なし・・』その後に住所が書かれていた。

主人公はそれに惹かれウキウキしながら帰った。

翌日、昨日の家に訪れた主人公。

豪邸の戸を開けると中は異様に静かで、
「っちわー、あのぉ~クリフさん?」と進むと床にはいくつかパズルが散乱していた。
さらに先に進むと男が倒れていた。

主人公は慌てて電話をかけようと受話器を取るも電話は繋がらない。
「電話を切って大丈夫だよ。・・・・これはテストだ。君は合格だ!」
「ベアトリスだね?身分証を確認しても」と男が笑いながら言った。

身分証を見せた後、
「北欧の人?」-「おばあちゃんが、そのフィンランド人なの」
「肩が可愛い・・・すごく魅力的だよ」-「・・・ありがとう。あなたに頼まれたもの買ってきたわ」
「親切にどうもいくら?」と聞かれ答えると少し多めの金額を渡される。

めちゃくちゃタチ悪いテストだし、女性が見知らぬ家に行くにしては無防備じゃ・・・とも思うが、まあ目をつむろう。

それにしてもこの2人の共演めちゃくちゃうれしい。

「素敵な家ね」(リトアニアの建築がどうとか?わかんなかった)
などと当たり障りない会話をしているとメジャーを取り出し、ベアトリスの肩や頭の大きさを測りだす男。
そして聴診器を取り出し、自分の心臓に充てる

「自分の心音聞いたことは?」という質問に首を横に振るベアトリス
「僕はいつもやってるんだ。・・・君のことが好きみたい」と冗談を飛ばす

こっそりお金返すところ良いね~~。真似しよ。
あと聴診器のやつも真似しよ。聴診器買わなきゃ!

「見せたいものがある。・・・いつから写真を?」-「わからない。しばらくやってる」
「うまいの?」-「わからない。練習中」
「妻は写真家だったんだ。見て」とアルバムを見せる男。

「素晴らしいわ・・・これ好き」-「お気に入りさ。欲しければあげるよ。」

「会えてよかったわ」-「こちらこそ。どうしたの?」
「クリフ、正直来るつもりじゃなかったの(?)」-「どうゆう意味?」
「あなたの元々のお願いに応える・・」-「僕のとこに来てくれ」
「え?ディナーに誘おうとしてるの?」-「違う。僕のとこに住みに来てくれ」
「本気?」-「お金は出す。欲しいものは何でも言ってくれ」
「何もいらないわ!」-「頼む!ここにいるのがどんなに淋しい知らないんだ」
「なら、どこかへ出かけましょうよ」-「選択肢はないんだ!!!!」と声を荒げベアトリスは走って逃げ去る。男は引き留めようとするが・・・。

その時玄関先に彼女はもらった写真を落としていった。
男は杖で写真を何とか取ろうとする。なぜか玄関から一歩も出ない。


ははーん。なんかあるな。
この声荒げたのはアウトだけど切実なんだろうな。心が痛い。

クリフからの電話を受けたベアトリス。
おそらく写真のことで何か言われたのだろう
「わかったわ・・・。すぐ行く」

彼の家に着くと玄関の中で待つ彼。
写真が外に落ちていた。

「いつ始まったの」-「妻(ロレイン?)がなくなった後」
「それから出ようとしたことはないの?」
首を横に振るクリフ。
「太陽は恋しくない?木は?・・・映画館は?スーパーマーケット」-「たくさんあるね」
「あなたの庭だって、ここからは見えないわ。蘭があったわ、すごく優美だったわ」-「植えたんだ。何年も前に。でもどんなだったか忘れてしまったよ」

すると一枚の写真を取り出した。そこには黄色の蘭が映っていた。
「ここにきて最初に撮った写真よ。丁度プリントが返ってきたの(?)」

最後のセリフは意味不明ですけども・・・誤訳か?
「プリントしにちょっと戻ったの」かな?わかんないけど良いシーンではある。

感想

本当に美しくて儚い・・・まるで蘭のよう(うるさいですね)

映画全体に優しさと繊細さが満ち満ちている。
演技も映像も音楽も一貫して素晴らしい。

最後の聴診器のところが狂おしいほど好きで・・・。堪んない。
ネガフィルム並んでるのとか、シャッターのたびにブラックアウトするのとか面白い。

2人の間に恋愛的な感情がほとんど感じさせないところがいい。もちろんその後は知りませんよ。
どちらかというと友達っぽく見える。

妻に先立たれて家から出られなくなったわけで、家にいても奥さん思い出すわけだしねきついね。

心の病気・トラウマを癒すことが主題の作品は負の部分をいかに表現するかだと思うんですよね。
その意味ではこの作品は尺が足りないような気もするんです。
要するに長編で観たかった!!!!!!!!!!!!!!!

監督としてどうなのか

『When You Find Me』に比べると多少見劣りする内容ではありますが良い作品だと思います。
「長尺で観たかった・・・」という願望が僕の中で生まれたので、僕はこの作品を高く評価してるんだなと思います。

『When You Find Me』は写真からインスパイヤされているので手放しで画を褒めなかったのですが、今作は褒めます。
例えば10分36秒以降の構図は淋しさと虚しさが襲ってくる素晴らしい画だと思います。

今回はブライスも脚本に関わっているようですね。

一方で短編だからの良さがあるとは思いました。
メイン以外のところが「何だこりゃ?」と感じる部分も多かったです。ルームメイトのシーンとか・・・。短編なので「まあいいか」と思いましたが。

あと長編となると話をどれだけ肉付けできるのか、観客を引き付けることができるのか悩ましい所です。(偉そうだな)

KUMA
KUMA

短編の延長線上に長編があると思えば、ブライスが長編で良い作品を生み出せない道理はないと思うんですけどね。
実際に観てみないと机上の空論止まりです。

『When You Find Me』同様にその映像の美しさや音楽の調和は素晴らしいと思います。

キャサリン・ウォーターストンは今作が映画デビュー作
『ファンタスティックビースト』シリーズで彼女のことを知りましたが、この作品では繊細な演技に目が行きます。素晴らしい才能ですね。

彼女しかりアルフレッド・モリ―ナしかり、どうもキャストが輝いて見えます。
これも当時既に複数の映画に出演していた彼女ならではのディレクティングが関係しているのでしょうか?

Call Me Crazy:A Five Film (Lucy) (2013)

元々は5つのオムニバス形式の作品で、そのうちの1つが今作です。

今回は英語字幕がついていたので解説のようなものは省かせていただきます。

あらすじ
ロースクールに通うルーシー。統合失調症を患ったルーシーが施設での交流を通して立ち直っていく物語。

ネタバレ感想

映像・音楽の良さと胸を打つ人間模様はもはや観慣れた光景です。
特に今回はピアノの音色が美しいですね~。

冒頭と中盤の症状に苦しむシーンはホラー映画のようなスリリングさがありました。

それにしても先生が優秀すぎるだろ!!!!!!!!!
こんな粋なこと言えるなんて・・・。
結局痛みを理解できるのは傷ついた人だけなんですよね・・・。

そして今まで観てきた短編同様に、セルフオマージュというかセリフやシーンの回収がうまいですよね。
特に最後のところよ、一歩踏み出して人生に答えを求める前向きさ。

監督としてどうなのか

うーん、なるほどね~~~。ここにきて新しさがあるというね。

トーンや物語は明るいのにスリリングな要素があるというギャップが堪らない。

特にビジュアル的な側面で言えば美しさに加え、今作では統合失調症の症状を映像で魅せる、つまり非常にスリリングで幻のような映像という新たな側面を見せてくれましたね。

そのスリリングさがあるからこそ心温まるシーンが引き立つわけなんですが。

まとめ

4作品から見えてくる顔

ここまでブライスの4つの作品に迫ってきました。

そこから見えてくるのは彼女の圧倒的な技術やセンス役者の魅力を引き出す演出力です。
彼女の才能を疑う人はいないでしょう。いても僕が消します。(訳:説得させます。)

そして作風の共通点も見えてきました。
ブライスの人柄を反映させたような前向きな作風であるということです

このような作風がいかにして生まれたのか。僕はじっくりと考えました。
しかし僕はその答えを既に知っていました。

それこそ『Dads 父になること』です。

『Dads 父になること』を観るべき理由

僕が今まで扱った4作品をランキングにしたならば『Dads 父になること』は第4位です。

しかしブライスの「監督」としての顔を知りたいのならば必ず観る必要があると思います

『When You Find Me』での

深い家族愛

『Orchids』での

繊細な思いやり

『Call Me Crazy』での

人のつながりや夢の持つ力

これらはブライスだからここまで伝えることができたのだと思います。

それもすべて『Dads 父になること』から垣間見えた家族のカタチが大きな影響力を持っているでしょう

だからこそ!!!!!!

『Dads 父になること』を観るべきなのだ!!!!!!!!(暴論)

『Dads 父になること』が彼女の作風が生まれたワケを裏付ける作品になっていると思います。

おわりに

彼女は女優業も積極的なので、大作映画監督は中々難しいかもしれませんが、
ジョディー・フォスターサラ・ポーリーなど監督としても大活躍中の女優さんがたくさんいるので、その一員に名を連ねてほしいですね。

とにかく自由に撮影してほしいです・・・・。(切実)

KUMA
KUMA

ブライス監督らしい作品がいつか劇場で観れる日を僕は待っています。

最後までお読みいただきありがとうございました。

まだ取り扱っていない作品がSW含め存在するのでもしかすれば#3があるかもしれません。
気が向いたら・・・。

今後の彼女の監督としての活躍に大注目です。

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