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ブライス・ダラス・ハワード「監督」としての顔#1

映画
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近年『ジュラシック・ワールド』シリーズや『ARGYLLE/アーガイル』と言った作品でメインの役を務め女優としても活躍中のブライス・ダラス・ハワード。

実は彼女、お父さんのロン・ハワード同様に監督としての顔を持っています

特に『マンダロリアン』S1-4、S2-3、S3-6や『ボバ・フェット』の5話で監督を担当し、ファンからも高く評価されています。

今回は、これから監督としてさらに大成していくあろうブライス・ダラス・ハワードの監督作品について語っていこうと思います。

#2も是非(↓)

Dads 父になること

あらすじ
アメリカや日本、コメディアンから俳優など様々な人へのインタビューや密着を通じて「父」という存在がどのようなものかに迫るドキュメンタリー。

Apple TV+ で独占配信されている作品です。

全てを肯定できるような内容ではありません。
少なからず”良い父親の姿”を強調して綺麗に映しています。

一方で、確実に言えるのは自分と父親の関係自分自身が父親としてどうあっていくべきなのか
家父長制が遅れた価値観となっている時代の中で社会を見つめ直すきっかけになる作品


1番面白いのはこのドキュメンタリーが監督の個人的な作品である事。

そもそも監督ブライス・ダラス・ハワードの父ロン・ハワードはファミリームービーとして出産シーンや妻の妊娠期間中、子育てに向き合う日常をよく映像に残していました。
その映像が度々差し込まれるのですが一家の雰囲気が伝わってきて面白い。

父の話に加えて祖父ランス・ハワードまでもがカメラの前に立って話をします。

そしてこのドキュメンタリーではこれから父になる若者リード・ハワードの姿に密着しています。
もうお分かりですよね?彼は監督の弟です。

本作はこれから父になる弟とその子どもへ向けた作品でもあるわけです。
リードさんの不安、そして出産後の幸せそうな姿はグッとくるものがあります。

KUMA
KUMA

率直に言ってハワード家が理想の家族過ぎて・・・。
羨ましくもありますが、それ以上に微笑ましくもあります。

予告編(↓)

監督としてどうなのか

”普通に”面白いと感じました。
飽きることはありませんでしたが、かといって前のめりになってみたかというとそうとは言えません。

構成としてはスターたちが代わる代わる話をしたのちに一般の方のドキュメンタリーへと移行するというスタイルをとっています。
僕はこの繋げ方が観やすいなとは思いました。

ドキュメンタリーですので扱う内容に左右されますし、作為性は極力削らなければいけませんし、何よりどこまで彼女が担当していたか不明です。

これだけでは監督しての「顔」がまだ見えてきません。
なので次からは彼女の監督としての「顔」が見える作品を観ていこうと思います。

When You Find Me (2011)

2011年に公開された短編作品。
Project Imagin8ion というプロジェクトの為に制作された作品です。

Canon USAの PROJECT IMAGIN8ION って? (raitank.jp)

あらすじ
第二子を妊娠中の Lisle 息子との何気ない会話の中で疎遠になっていた姉の話題になる。
彼女は母を失ったある晩に起きた出来事をふと思い出し、姉の下へと足を運ぶことにした。

YouTube で観ることができますが字幕はありません
無くてもなんとなく理解できると思います。
このあとネタバレありの感想書くので参考にしてください。

ちょくちょく端折ったり、聞き取れなかったり訳間違えてたり、意訳であったりします。(↓)

ネタバレ解説・感想

息子との会話の中で姉の話になり、過去の記憶が蘇ります。

そこでは農場で楽しそうに遊ぶ歳の離れた姉妹。
トラックに乗った男がやって来て「お父さんが連れて来いと言っている。急げ」と深刻な面持ちに姉は何かを察します。
姉は必死に妹(Lisle)を連れてこようとしますが、ついさっきまで遊んでいたもんですからまあ急にはやめれませんよね。

何のごっこ遊びしてるかわからんけど微笑ましい。
ここがリアルすぎて、お姉ちゃん役の子演技がうめすぎる。
天国から地獄へ。

場面は病院へと移ります。
姉妹が到着すると病室ではがんを患っているであろう女性を男が抱きしめていました。
女性は動きませんでした。病室の様子を見て姉は妹の方へ振り返り怒りをあらわにして走り去っていきます。

当然ですよね。親の死に目に会えなかったわけですから。
でも妹のせいにするには・・・と思いますが彼女もまだ子供、仕方がない。

その後家に帰った姉妹、幼い妹からの「ママは?」「どこに?」という質問攻めにどこか悲しみと怒りを込めて返事をする姉。

その夜
「天国ってどこ?」-「遠く」
「行きたい。」-「無理」
「なんで?」-「別の宇宙だから」
「トラックがある」-「宇宙船がいるの。馬鹿ね」(この後聞き取れなかったエイリアンがどうとか。)

その夜、宇宙の夢を見たLisle はベットから抜け出し、どこかへと一目散に走っていきます。
それを追いかける姉。
真夜中にたどり着いたのは大きな鉄格子の門がある場所。

「上にあげて。この中に宇宙船があるの」と言う妹を連れ帰ろうとし姉は真実を告げます。

母が死んだこと、入ろうとしているそこは墓地であること。
Lisle は困惑し真実を目にしますが「私たちはまだママを見つけられる」と言いなんだかんだ墓地の中へ。

そこで壊れた飛行機を見つけるのでした。コックピットに乗りスイッチを触ると赤い光を出し不思議な体験をします・・・。

ここらへんの一連の音楽やら演技が抜きんでて良い。

時は現在。

姉の下を訪れたLisle。
レストランで「どこに泊まってるの?」「子供の性別は?」など他愛のない会話の後

「話さなきゃいけないことがある。ずっと話そうと思っていたけど。信じてもらえないし時がたつほど言うのが辛かった。あの夜のことよ」と姉は黙って聞いています。

「私ママにあったの。すべてが白で・・・そこにママがいた・・・とても美しく・・・ママは私にハグをして・・・」とその体験を克明に話すLisle

続けて「『もう行かなきゃ』とママが言い。・・・お姉ちゃんについて言ったの・・・『あの日病院で言ったことは本気で言ったんじゃないってわかってるわ』と、心当たりある?死ぬ前に喧嘩したの?」と涙を浮かべながら言うLisle に姉は

「いいえ。してないわ。・・・・でも本当に素敵な夢ね」と。

気まず~~。
セリフ回しがとても綺麗で美しい・・・、
楽しい記憶を思い出す時に、こうなんか一つ一つ丁寧に扱う感じがセリフ回しから伝わってくる。

翌日。

車で妹を送ろうと迎えに来た姉。
その途中ある場所で休憩をする。その場所は母の墓がある墓地だった。

花をお墓に添えた後、
「あれは喧嘩じゃなった。ママはずっと寝てたと思ってた。私はひどいことを言ったの。ママにひどく怒ったの。いつも傷つけられたと思ってたの(?)。」という涙ながらの告白に
「待たせてごめん。サヨナラも言わせてあげられなくてごめん」とLisle は泣きながら姉にハグをする。

「あなたのあの経験・・・・どうゆう意味なのかな?」と姉が訪ねる

「わからない。でもママが最後に言ったのは『あの子に準備ができるまで私は待っている』だったの」と言い抱き合う姉妹。

物語は再び白い世界へ・・・。

今度は母の待つ大きな木に向かって走る影が2つ・・・・。

ここら辺ヤバかったもうわかるよね?ね!

お姉ちゃん泣いちゃったからなんて言ったかよく分かんなかったけどニュアンスで行こう!

感想

こんな素敵な話あるかってぐらい泣きそう。というか泣いた。

喪失から長い時を経て立ち直っていくんですが、
後悔っていうのは時がたつほど大きくなるもので、ふとした時に思い出して眠れぬ夜を過ごすもんなんですよ・・・(経験談)
過去における姉妹の悲しみの差が印象的でした。

死者が生きている人に思いを伝える、意識で繋がれる、この死生観は非常に面白いですね。
現実もこうあってほしい。

時を経ても傷を癒すことができる。時が癒したんじゃなくて、愛が癒したのが印象深い。

飛行機見つける時の音楽好きすぎる。

そして何と言っても映像が素晴らしい。
映し方も良いですし、白い世界の何とも言えない神秘さ。アニメーションの子供っぽさ。
ベットの下から靴(スリッパ)を履くシーンのセルフオマージュや姉妹の表情の映し方も絶妙ですね。

ベランダでタバコを吸う姉、バスの窓に反射する顔、闇夜を駆ける姉妹、
ラストの空を飛んでいくカメラワークは他の映画に全く見劣りしない。

本編はこちら(↓)
灰色のサムネですがバグです。2024年3月時点は観れます。

監督としてどうなのか

母を失った苦しさや後悔からの回復をファンタジックに美しく描いた作品です。

応募された約10万枚の写真から厳選した8枚、そこから生まれた物語ですが、何より脚本がうまい。(ブライスは脚本担当していないようですが)

一方で、音楽のタイミングや映像の多彩さ、絶妙な表情を引き出す監督の演出力が垣間見えたのではないでしょうか?

感想でも書きましたが、とにかく画的な魅力が高いと思います。
もちろん公募した写真が元というのはありますが、それを加味しても素晴らしいです。

父親の評価

実は父ロン・ハワードがこの作品について言及しているんですよね。
しかも僕と似たようなこと言ってる。(パクッてないからね)

Bryce ended up making a movie that’s almost magical realism, that’s very personal and very, very character driven. I wasn’t surprised by that because she’s a fine actress and she cares about human relationships, first and foremost, but it was also very, very visual. I know for a fact that those breakthrough ideas and the surprisingly visual choices that were made were stimulated by the contest winners and their creativity. It really was a collaboration and, in this case, a really successful creative experiment.

Ron Howard WHEN YOU FIND ME Interview (collider.com)

と、べた褒めなわけですが、そりゃこんな作品べた褒めするでしょ。

本業の人は注目するところが凄いですね。

魔術的リアリズム(マジックリアリズム)、キャラクター(人間性)主導的で温かみのある作品を非常に美しい映像で描く点、それはブライスが良い女優であり人間関係に注目してるからなせる業、ね・・・

なるほど。演者としての視点が、観客の感情を動かすのか・・・・。

この後こうも言うんですよ、

Well, she started directing plays in college and she enjoyed it, but she didn’t particularly express any great interest beyond that. And then, she made a short film about four years ago, and it was good. At that point, she actually began taking a lot of classes, in her spare time, in cinematography and screenwriting, and just deepened her understanding of the medium, and I could really see the difference. I visited the set a couple of times, but she didn’t need my help. She really understood the script and had helped shape it into something that reflected her point of view, her aesthetic and her taste. I think she directed a very poignant, beautiful, surprising, almost poetic short film.

Ron Howard WHEN YOU FIND ME Interview (collider.com)

注目すべきは「4年前に撮った短編が良かった」という発言
次にこの短編を通して監督としての素顔に迫っていこうと思います。

KUMA
KUMA

それにしてもこれ褒めすぎやろ笑
仲良いのは良いことだけど。

おわりに

今回はブライス・ダラス・ハワードが監督した2つの作品を扱いました。

そこで何となく彼女の監督としての顔が見えてきました。

彼女が監督した作品が、ロン・ハワードが言及した4年前の作品含め、まだいくつか残っているのでそれは次回以降。お楽しみに。

最後まで読んでいただきありがとうございました。

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